百人隊長の信仰

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聖書の言葉

5 さて、イエスがカファルナウムに入られると、一人の百人隊長が近づいて来て懇願し、6 「主よ、わたしの僕が中風で家に寝込んで、ひどく苦しんでいます」と言った。

新約聖書 マタイによる福音書 8章5節-6節

吉田謙によるメッセージ

ここに百人隊長と言われる人物が登場します。この百人隊長というのは、占領軍の軍隊の階級を表す名前でした。今日の物語には、イエス様と、しもべの癒しを懇願する百人隊長とのやりとりが詳しく記されています。そしてイエス様は、このやり取りの中で、この外国人の百人隊長の信仰に、いたく感心なさったのでした。

では、イエス様は、この百人隊長の信仰のどのような点に感心なさったのでしょうか。いくつか感心なさった点はあるのですが、今日はその中から一つの点に注目したいと思います。それは、イエス様の権威に対する彼の深い信頼でした。彼は、イエス様に対してこう願ったのです。8節後半。「ただ、ひと言おっしゃってください。そうすれば、わたしの僕はいやされます。わたしも権威の下にある者ですが、わたしの下には兵隊がおり、一人に『行け』と言えば行きますし、他の一人に『来い』と言えば来ます。また、部下に『これをしろ』と言えば、そのとおりにします。」

この百人隊長は、長い軍隊生活の中で、権威がどのようなものであるかをよく知っていました。権威が隅々まで浸透しているところでは、上に立つ者の意志通りに下の者が動きます。これが権威なのです。そして、この百人隊長は、それと同じ関係が、イエス様と病気との間にもあることを信じていたのです。イエス様が一言命じたならば、それで病気は退散してしまう。人間の悩みや悲しみに対して、イエス様は圧倒的な力をもって命じることが出来る。圧倒的な力をもって私たちを悩みから救い出して下さるのだ、と彼はイエス様のことを信じていたのです。

私たちは、イエス様のこういう力を果たして信じているでしょうか。毎日の生活の中で、私たちは様々な悩みや苦しみに直面し、途方に暮れることがあります。私たちは、キリストの権威を聖書から教えられていますが、現実の生活の中では、そのことがどうしても信じられないことを、しばしば経験するのです。しかし、私たちがどう受けとめようが、実際にイエス様は、その力をもっておられます。私たちは今も様々な悩みを背負い、悲しみを味わいます。しかしイエス様が命じられたならば、たった一言で、その一つ一つをたちどころに解決することが出来るのです。イエス様の権威の外で、私たちに襲いかかる悩みや悲しみなど一つもありません。イエス様は、そういう全ての事柄を既に支配しておられます。その悩みの一つ一つに向かって、「行け」と言えば、それらは、たちどころに去っていくのです。しかも、このお方が私たちのことを愛して愛して止まない、ついには私たちの罪を贖うために十字架の上で死んで下さったのでした。このことを私たちがしっかりと心に刻むことが出来たならば、私たちは自分に与えられた様々な悩みや悲しみについて、もっと別の見方が出来るのではないかと思います。それは、イエス様の大きな御力の支配のもとにある悩みや悲しみです。必ず「万事が益となる」悩みや悲しみであります。どんなに困難な道であっても、神様の御心ならば必ず実現するのです。この世の全てのものは、神様の権威のもとにあります。神様が『行け』と言えば行きますし、『来い』と言えば来るのです。そして、私たち自身も、この神様の権威のもとにあります。

この百人隊長の信仰は、イエス様が山上の説教の中で教えられていた信仰者の理想の姿そのものです。「貧しい者、悲しんでいる者、飢え乾いている者は幸いである」とイエス様は教えられました。自分の欠けや弱さや罪を知って、心底、打ち砕かれ、涙しながら、「貧しい自分にはどうしてもイエス様の助けが必要です!」とただひたすらにイエス様にすがりついていく、そういうあなたが幸いなのだ、とイエス様は語りかけて下さったのでした。そういう信仰者の姿が、イスラエルではなくて、ユダヤ人が忌み嫌っていた異邦人の百人隊長の中にあった、これが今日の物語なのです。

信仰の道は、本来、シンプルです。必要とされているのは神の言葉への信頼です。全てを支配しておられる神様が、独り子の命を犠牲にするほどまでに、この私を愛し抜いて下さいました。そして、その凄まじいまでの愛をもって、「私のもとに来なさい。あなたを休ませてあげよう」と招いて下さいます。そうであるならば、私たちは何をためらう必要があるでしょうか。素直になって、その招きに応えればよいのです。ただそれだけのことです。

私は、この「神の権威ある言葉」ということを覚える時に、あの天地創造の物語を思い起こします。神の語られた言葉によって、この世界の一つ一つが形づくられていった、というあの物語です。あなたも、この百人隊長のように、イエス様のお言葉は必ず実現するのだと信じ、自らの罪や弱さを素直に認めて、「イエス様、私にはあなたの助けがどうしても必要です」、「どうか『光あれ!』と一言おっしゃって下さい!」と、幼子のようにイエス様にすがりついてみてください。そうすれば、たとえ今が真っ暗闇で、先行きの見えない人生であったとしても、きっと主が「光あれ!」と語りかけ、あなたの人生にも希望の光を灯してくださるでしょう。

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